中間型、混合型インスリンを撹拌する理由
110A18に、「速効型インスリンは撹拌不要である」という知識が出題されています。
インスリン製剤の分類と目的
まずインスリンには大きく次の4分類あります
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(超)速効型
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中間型
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混合型
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持効型
その目的は、①食後の一過性の追加分泌を補う②食事に関係のない基礎分泌を補う、の2つに分かれます。
速効型→インスリンの追加分泌を補う
中間型→速効型+プロタミン*→インスリンの基礎分泌を補う
混合型→速効型+中間型→追加分泌と基礎分泌の両方を補う
持効型→インスリンの基礎分泌を補う
*プロタミンはヘパリンの拮抗薬で、インスリンの作用を遅らせる作用がある。
名前の通り、下へ行くほど作用時間が長くなり(②基礎分泌)、一方で食後高血糖などを素早く落とす機能(①追加分泌)はなくなります。
撹拌する理由
薬剤は均等に撹拌されてから投与される前提になっています。撹拌を行わずに注射すると、速効型インスリン成分のみが注射されてしまい、想定の2-3倍の活性が起きてしまう、というリスクがあります。
中間型インスリン
混合型インスリン
まとめ
参考
インスリン製剤の写真
撹拌不足でどうなるか
有機溶剤の尿中代謝物の覚え方(高校化学)
ベンゼンやトルエンなど有機溶剤中毒の検査について、国試では以下を覚えなければなりません。
- ベンゼンー尿中フェノール定量
- トルエンー尿中馬尿酸定量
- キシレンー尿中メチル馬尿酸定量
- トリクロロエチレンー尿中トリクロロ酢酸、尿中総三塩化物定量
- テトラクロロエチレンー尿中トリクロロ酢酸、尿中総三塩化物定量
- 1,1,1-トリクロロエタンー尿中トリクロロ酢酸、尿中総三塩化物定量
- ノルマルヘキサンー尿中2.5-ヘキサンジオン
- メタノールー尿中メタノール
- 二硫化炭素ー尿中・血中二硫化炭素
- スチレンー尿酸マンデル酸
太字は国試に既出。
出題例は101F78など。
正直これを丸暗記や語呂で覚えるのは苦しいので、高校レベルの化学式だけ書いて覚えようとしてみました。
基本的には有機物はそのままだと尿に溶かせないので、-OHや-COOHをくっつけて溶かします。
1. ベンゼンは-OHをつける。
2,3. トルエンとキシレンはメチル基が一個多いだけなので代謝物もメチル基の有無で区別します。
4-6. クロロとつくものは全て、-COOHをつけるか、塩化物定量。
7. ヘキサンとついているのでそのまま
8,9. そのままなので割愛
10. これだけ化学式から覚えるのはきつそうなので、丸暗記。消去法でもとけます
前半の構造式を一度書けばスチレン以外理解で導けるので、全て丸暗記するよりだいぶ楽なのではないかと思います。
以上です。
ケアマネジャーと介護に関連する職業
資格に関する用語
業務独占:その資格を持っている人しかその業務ができない。例:手術や処方は医師しかできない
名称独占:その資格を持っている人しかその職業名を名乗れない。例:保健師。
業務独占の資格は必ず名称独占です。
例:医師でない人が勝手に医師を名乗ることはできません。
★業務独占→名称独占は成り立つ。
名称独占の資格は業務独占とは限りません。
上記の例の保健師は保健指導を行う人ですが、これは医師もやってよい業務とされています。
★名称独占→業務独占は成り立たない。
名称独占でも業務独占でもない職業
多くの医療スタッフは少なくても名称独占ではあるのですが、この二つの独占がないスタッフが4つあります。
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介護支援専門員(ケアマネジャー)
ケアマネジャーだけ例外
このうち1.のケアマネジャーは『介護保険法』という法律に定めがありますが、それ以外の3つは法律に定めがありません。
ケアマネージャの業務は介護などの計画=ケアプランの作成です。これは患者本人で作っても良いので、業務独占とはなりません。また名称独占でもないのが意外です。
ケアマネジャーの資格は5年間の研修+試験だそうで、これを勝手に名乗っても良いのは違和感があります。
北海道庁のホームページの記載が分かりやすかったので引用します。
介護支援専門員は、名称独占や業務独占といった、罰則でそれ以外の者による業務の実施や名称の使用を制限する法定資格ではなく、介護保険法上、居宅介護支援事業者(居宅介護サービス計画作成事業者)や介護保険施設として保険給付の対象となる指定を受けるための人員基準上、配置されることとされている職員です。
主任ケアマネージャー
地域包括支援センターには次の3つの職業の設置が義務付けられています。
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主任ケアマネージャー
主任ケアマネージャーは自分の記憶する限りここで始めて習う職業です。ケアマネジャーとどう違うのでしょうか。
主任ケアマネージャー:ケアマネジャーとして一定期間の業務を行ったものが、指定の研修を受けることでとる資格
だそうです。資格の管理はケアマネジャー同様、各都道府県が行っている。ケアマネジャーの上位職種というイメージのようです。
介護に関連する資格
名称に「介護」がつく資格は、国試レベルでは
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介護支援専門員(ケアマネジャー)
の3つで良いと思います。
業務内容
ケアマネ→ケアプランの作成
介護福祉士→介護の方法を指導
訪問介護員→実際に行って介護する実働部隊
とすみわけがされています。
まとめ
業務独占でも名称独占でもない
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介護支援専門員(ケアマネジャー)
法律に規定されていない
おまけ
今回の記事を書いている途中に知ったのですが、義肢装具士はなんと、日本に62人しかいないそうです。
義肢装具士国家試験の合格率は80%だそうなので、医師国家試験より狭き門といえるかもしれません。
参考
公衆衛生がみえる第4版
義肢装具士について
眼振のまとめ
眼振について、国試の範囲でまとめました。
かつてある有名な神経内科医は弟子に対して次のように忠告したそうです。
「眼振について記載しても何ら意味はない」
(R. Wartenberg: Diagnostic Tests in Neurology: A Selection for Office Use. 1953 Year Book Publishers, Inc. Chicago, IL)
それくらい臨床的には解釈が煮え切らない所見なのかもしれません。とはいえ国試の症例文には普通に出てくるので、割り切って覚えるべきことを覚えようと思います。
用語の定義はハイライトに、試験の重要事項は太字にしてあります。
眼振の定義
■眼振とは
不随意で周期的な往復眼球運動のこと。固視を妨げる。
英語ではnystagmusです。108C12で必修の英語問題として出題されているので、覚えておくと良さそうです。
固視:見ようとしている物体(固視目標)の像を網膜の中心(中心窩)でとらえること
振盪:揺り動かすこと。または、揺れ動くこと
■方向の定義
①視線が徐々にずれていく
②それを急速に修正する
生理的眼振は、例えば電車に乗っているときに外を眺めているときにも起こります。
分類
■障害部位による分類
眼振は、①三半規管、②前庭、③小脳のいずれかが障害された際に起こります。
■眼振の種類による分類
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方向交代性→小脳、脳幹部障害(=中枢性)※中枢性の場合はこれ以外にも、上下方向や回旋性など様々な性状の眼振が出現しうる。
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定方向性→片側の前庭機能低下(=末梢性)
★めまいにも末梢性と中枢性がありますが、末梢性=前庭×、中枢性=小脳、脳幹×のことを指します。
一定の位置……(懸垂or仰臥位) × (右or正面or左)の計6通
座位→懸垂頭位、あるいはその逆。
半規管内の耳石が移動することによって起こる→頭位変換から眼振までにタイムラグあり(=短い潜時)
耳石が特定の位置に落ち着くと収まる→数秒~数十秒で消失
④温度眼振(カロリックテスト)
カロリックとはかつて熱の正体だと考えられていた物質のことで、(適当に調べた範囲ではおそらく)熱量を指すカロリーの語源です。熱なので、温度変化による眼振をみます。
○やり方と意義
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外耳道に温水と冷水を注入する
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@仰臥位。温水→注入側に向く眼振。冷水→逆向き。暖かい人は周りに人が集まるので、温水では注入側を向く、と覚えています。
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@座位。仰臥位と逆。
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これらの生理的な反応が減弱している状態を半規管麻痺(CP:canal paresis)と呼び、前庭神経障害を示唆する。
■方向による分類
純回旋眼振:眼球が軸回転する🔄
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自発性→中枢性
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頭位変換時→BPPV
眼振をきたす疾患
国試の出題範囲で眼振をきたす可能性のある疾患を列挙しました。
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三半規管×→BPPV
特殊な眼振
聴神経鞘腫で見られます。
・患側を注視→低頻度かつ大きな振幅の眼振
・健側を注視→高頻度かつ小さな振幅の眼振
ペンを持って注視してもらっているのが分かります。一つ目が患側(左)方向、二つ目が健側(右)方向です。
○瘻孔現象:外耳道を加圧、減圧するとめまいが誘発される
瘻孔症状、圧迫眼振とも。
外リンパ瘻と真珠腫性中耳炎で陽性
まとめ
垂直方向の眼振→中枢性
方向交代性眼振→中枢性
瘻孔現象→外リンパ瘻、真珠腫性中耳炎
参考
レビューブックマイナー 2019-2020
マクギーのフィジカル診断学 原著第4版
4,5年生必見!ポリクリ攻略法~人間関係編~
ポリクリの過ごし方後編です。
前回の実習編ではポリクリ中の時間の使い方について書きました。
月から金まで平日は9時-17時、拘束時間もとても長いです。(科によってはもっと短かったり、逆に長かったりもします)
ストレスを感じることも多いです。
そして、ストレスの原因で最も多いのが、人間関係です。
正直、ポリクリの目的は医学知識うんぬんよりも、将来医療現場に出た時、そりが合わない職場の人と良好にコミュニケーションを取る練習なんじゃないかと思っているくらいです。
自分の周りでは、バチバチに喧嘩してlineグループすらなくなった班、喧嘩とまではいかなくとも険悪な雰囲気で実習を終えた班、たくさんありました。
諸悪の根源はその長さにあると思っています。大学により幅がありますが大体51週間が日本標準とされているので、
一日8時間×5日×50週=2000時間
を特定の班員で過ごすわけです。
2000時間
これを楽しく仲良く過ごすか、早く終われと念じながら苦痛の中で過ごすか。
僕の班も雰囲気が悪くなったことが何度かありました。
自分自身かなり努力して、何とか関係を良好に保ち、今は一緒に勉強会もするし遊びにもいく仲の良い班になっています。
仲が悪い班は食事も別、打ち上げもしない、レポートも相談できない、だから実習中も楽しくない、楽しくないから身につかない、医学面白くない、という悪循環に陥ります。
今回の記事では、そんなポリクリ班での人間関係について、自分の意見を書いています。
これから実習、実習なうの人たちは、良ければ参考にしてください!
あいさつする
一番大事だと思うのは、挨拶です。
なんだいきなり小学生レベルかと思いきや、挨拶のできない医学生、意外に多い。
プライドが高いのか、シャイなのか、相手からされたらするけど、自分からはしないっていう人も結構います。
もっと言うと、医者にもそういう人がいます。正直話しかけづらいです。
朝集合したとき、構内で会った時、自分から挨拶するようにしましょう。
朝は出来れば笑顔で「おはよう」、どこかで会った時は「よ」だけでも良いので自分から挨拶しましょう。
最初は恥ずかしいかもしれませんが、慣れます。
されて嫌な人はいませんし、コストゼロです。
人間関係が驚くほど好転します。
大事なのは、相手からの好意を期待しないことです。
期待通りの反応がなかったときに心が傷つきます。
挨拶は働き出してからも重要です。
以前看護師の友達に、
「自分から挨拶してくれないドクターは苦手。とうため君も職場でむすっとしたらだめだよ」
と言われたことがあります。
繰り返しますが、挨拶はタダです。相手の時間もほとんど奪いません。
変なプライドや遠慮は捨てて自分からするのが良いです。
話しかける
心理学で単純接触効果というのがありますが、ポリ班の人間関係も同じだと思っています。
レポートのことでも、お昼ご飯のことでも、先生の噂でも、話題は何でも良いと思うので、話題をたくさん共有しましょう。
自分から話しかけましょう。ポリクリで度々発生する謎の待ち時間はたいていとても暇なので、よっぽど偏屈な学生じゃなければ快く応じてくれます。
注意点として、少なくとも自分から振らない方が良い話題が2つあります。
①成績や勉強の進捗などのマウントの原因になる話題
②他人の悪口
です。
前者は高校時代から何度となく繰り返されてきた受験生や医学生の争いのゴールドスタンダードです。上級生になったらそろそろ卒業したい話題です。
後者は、百害あって一利なしですし、たいていはブーメランです。あと、単純に人の悪口ばかり言う人はダサいです。
これらの話題になったときは聞き役に徹して、自分の意見は言わないようにしていました。
また、こういった話題に限らず、時にイラっとする意見を言われる場合があります。
そういった発言は全て、アンガーマネジメントの練習と捉えていました。
フラストレーションは溜まる状況を回避するのも大切ですが(一次予防)、自らのネガティブな感情の動きにいち早く気づき(二次予防)、話題を変えたり捉え方を変えることでそれらの感情をさっさと捨てること(三次予防)が大事だと感じています。
予防医学の3つの予防
ただし、どれだけ予防しても人間関係のヒヤリ・ハットは必ず起こります。
そういった場合にどう対処するべきか、次に説明します。
人と喧嘩しない
時たま、実習そのもののストレスでポリクリ班の中で空気が悪くなることがあります。
つまらない講義やオペの前後などは特に。
一番多いのが、意識高い勢と意識低い勢の間で険悪になるパターンです。
例えば僕の周りでは、意識の高い班員が、真面目に手術見学しない学生に嫌味を言うケースなどがありました。
次のことを忘れないようにしましょう。
意識の高い人は、その熱心さを他人に強要してはいけません。
意識の低い人は、そのやる気のなさを他人に強要してはいけません。
たとえ理解できなくても、他人のポリシーを尊重しましょう。
最も迷惑なのが、他の班員に迷惑をかける場合(遅刻魔、マジキチ発言で先生を怒らせる、無理があるサボり方をする)です。
このレベルの場合は、残りの班員と仲良くして、該当する人とは最低限の挨拶とやり取りで済ませるのが現実的な対処法です。
間違っても他人の行動を変容させようとしてはいけません。
必ず争いになります。
これら以外の些細な理由で険悪になった時は、その場で解決しようとせず、一晩おきましょう。
翌朝、何事もなかったかのように挨拶から入ればよいです。
たまに一緒に勉強する
定期的に勉強会をすると良いです。
自分の班では医師役と患者役を持ち回りにして、2週間に一度くらいの頻度でOSCE形式の症例検討会を行っていました。
別の班の友達にこれを話した時
「僕らの班はそんな仲良くないし意識高くないからそういうのは始まらなかったなあ」
と言われましたが、正直めんどくさがっているだけではないかと思います。
あまりやる気のなさそうな人でも誘うと意外と来てくれます。国試対策でも症候学でも、レポート書くだけでも、参加者のニーズに合う勉強会をすれば良いです。
大事なことは学力を上げることというよりも、モチベーションの維持、ストレス発散なので、皆がやりたいことをリサーチするのが大事です。
もう一つ大事なのは、自分から提案することです。挨拶のところでも述べましたが、自分からというのはすごく大事だと思います。
誰しもファーストペンギンにはなりたくないのです。企画のコストはありますが、メリットは多いので良ければ取り入れてみてください。
周りを見ても、勉強会をしている班は仲の良い班が多いです。仲が良いから勉強会をするのではないかという意見もあるかもしれませんが、どちらも正しいと思うのでここでは議論しません。
定期開催にすると、仲があんまり悪いと他の班員に迷惑が掛かるという心理が働き、それなりに良好な関係に保たれる、というのもあるのかもしれません。
指導医との接し方
番外編です。
たまに指導医からの質問に対して、一所懸命知ってるアピールをする人がいます。
個人的には悪手だと思います。
ポリクリ回ってて強く感じたのは、優秀で口頭試問にバチバチ答える学生よりも、多少不勉強でも「なべおたま」がちゃんとできる人の方がウケが良いということ pic.twitter.com/OnuEdGsDDY
— とうため (@KmoEeEvUJtX9Bnk) 2020年5月19日
指導医も人間なので、相手に知らないことを教えてあげた、と思う方が気持ちがいいですし、何かとスムーズにいきます。
なべおたま、おススメです。
最後に
以上がポリクリの人間関係について、個人的に大事だと思ったことです。
僕は4年生の終わりにポリクリ班が発表されたとき、正直やっていけるかな、と思うようなメンツで不安を感じたのを覚えています。
ポリクリ前に決めたことは、人間関係を投げ出さない、というルールです。
これは、怒ったり腐ったりして、相手を無視する・コミュニケーションを放棄することはしないということです。
前述の通り僕自身は、ポリクリは将来医療現場で起こるであろう軋轢の回避訓練だという捉え方をしていました。
通常であれば馬が合わない人とは関わらなければいいだけですが、そうはいかないのがポリクリです。
せっかくなら笑いの絶えない楽しいポリクリを過ごしてください!
以上です。