ゆとり心臓血管外科医の備忘録

ゆとり医学生が心臓血管外科専攻医になりました。

PEEPが循環動態に与える影響

PEEPが循環動態に与える影響(特に、心不全を念頭に)

 

静脈灌流量低下による前負荷軽減

胸腔内圧増加→上下大静脈からの静脈灌流の低下。

過剰な前負荷で心拍出量が低下した場合には有用だが、

右室梗塞や肺塞栓症などの右心不全を認めている場合は前負荷の減少がさらなる右室拍出量減少につながるため注意。

収縮期の左室壁内外圧較差低下による左室後負荷軽減

簡単には、胸腔内を陽圧にしたぶん左室を外側から押して収縮の手伝いをしてくれる(後負荷の軽減)

心不全患者ではPEEPを0から10cmH2Oまで上げることで左室壁内圧較差の有意な低下あり。健常者では差がなし。(Naughton MT, Rahman MA, Hara K, Floras JS, Bradley TD. Effect of continuous positive airway pressure on intrathoracic and left ventricular transmural pressures in patients with congestive heart failure. Circulation. 1995;91:1725–31.)

効果はわずかだが、心機能低下している場合は特に有利に働く可能性がある。

肺血管抵抗低下による右室後負荷軽減

Goldenberg NM, Hare GMT. From the Journal archives: Understanding the mechanism(s) regulating hypoxic pulmonary vasoconstriction: how an early study has led to novel translational approaches. Canadian Journal of Anesthesia/Journal canadien d’anesthésie. 2013;61:195–9.

肺胞虚脱の改善→無気肺や肺水腫によるHPV(hypoxic pulmonary vasoconstriction:酸素供給量の低い部分の肺血流を下げる生理的なVQミスマッチ改善機構)による肺血管抵抗の増加を改善。

過剰なPEEPは肺胞過伸展からの毛細血管抵抗増加につながるため注意。

更新

コロナで暇になった大学6年生の時に作ったブログです。

初期研修が始まりすっかり存在を忘れ、連携していたtwitterにもログインできなくなりました。名前も気づいたらXに変わっていました。

直美全盛時代ではありますが、仕事は面白いことじゃないと続かんだろうしお金稼ぐだけならそもそも医者じゃなくてもよかろうと思い、ノリと逆張りで心臓血管外科に進みました。

 

心臓血管外科は、初期研修と専門医のギャップが大きい診療科の一つと思います。実際研修を始めて、手術手技から人工心肺の知識・周術期循環管理に至るまで、インターネットや研修医向けテキストには明文化されていない様々な疑問に日々ぶつかってきました。

時間は空きましたが昔作ったプラットフォームがありましたので、そういった日々の疑問を調べてまとめた内容を、細々と更新していこうと思います。

左心系ベントの役割とダブルルーメンである理由

人工心肺セットアップの際に、送脱血管カニュレーション後、ベント留置を行う。

左心系ベントの目的

  1. 左室心筋の過伸展防止

  2. 手術視野の確保

  3. 心筋保護中の心筋温上昇防止

  4. 空気抜き

  5. 心機能回復までの仕事量軽減

  6. 左房圧低下による肺水腫・肺出血・肺高血圧の予防

このうち、特に1,4の理由が重要である。

1は、何らかの理由で脱血不良となったとき、CSからの灌流血、気管支動静脈からの血液が、右室→肺動脈→肺静脈→左房→左室へと入り込む。また、ARがあると逆流血も左室へ流入。これらによる過膨張を防ぐ目的。

4.については、体外循環離脱前のエア抜きとしての役割である。エア抜きは他にルートベントや場合によって心尖部や置換後人工血管にサーフローなどを刺して行うこともある。

左心系ベントの種類

  1. 右上肺静脈→左心房→僧帽弁→左心室
  2. 心尖部→左室
  3. 肺動脈

このうち、2の心尖部を経由する方法は心筋損傷が多くほぼ使用されない。

3の肺動脈ベントは左室の減圧効果は間接的で不安定なため、先天性心疾患やre-do症例で他の方法が難しい場合にしか使用されない。

側枝(ダブルルーメン)の役割

メインのルーメンに加え、ピッグテイル(青いルーメン)がついているベント(サンプタイプ)。二重構造なので側枝というのはやや正確さに欠けるが……。

  • メインのルーメンが先当たりした場合などでもピッグテイルからの空気取り入れにより過陰圧がかからない(サンプ効果
  • 圧モニターライン(左室内圧が高まりベンティング不十分な場合逆血が上がってくる)

Argyle™ Fukuroi レフトベント™ カテーテル カーディナルヘルス 【AXEL】 アズワン

 

参考

最新 人工心肺[第五版] 理論と実際

中間型、混合型インスリンを撹拌する理由

 
110A18に、「速効型インスリンは撹拌不要である」という知識が出題されています。
 

インスリン製剤の分類と目的

まずインスリンには大きく次の4分類あります
  1. (超)速効型
  2. 中間型
  3. 混合型
  4. 持効型
 
その目的は、①食後の一過性の追加分泌を補う②食事に関係のない基礎分泌を補う、の2つに分かれます。
 
速効型→インスリンの追加分泌を補う
中間型→速効型+プロタミン*→インスリンの基礎分泌を補う
混合型→速効型+中間型→追加分泌と基礎分泌の両方を補う
持効型→インスリンの基礎分泌を補う
 

 
*プロタミンはヘパリンの拮抗薬で、インスリンの作用を遅らせる作用がある。
 
名前の通り、下へ行くほど作用時間が長くなり(②基礎分泌)、一方で食後高血糖などを素早く落とす機能(①追加分泌)はなくなります。
 

撹拌する理由

中間型インスリンおよび混合型インスリンは白色混濁があり、この白色部分がインスリンです。
薬剤は均等に撹拌されてから投与される前提になっています。撹拌を行わずに注射すると、速効型インスリン成分のみが注射されてしまい、想定の2-3倍の活性が起きてしまう、というリスクがあります。

 

 
まとめ
中間型インスリン、混合型インスリンは使用前に撹拌しよう
 
 
参考
インスリン製剤の写真
撹拌不足でどうなるか

有機溶剤の尿中代謝物の覚え方(高校化学)

ベンゼントルエンなど有機溶剤中毒の検査について、国試では以下を覚えなければなりません。

  1. ベンゼンー尿中フェノール定量
  2. トルエンー尿中馬尿酸定量
  3. シレンー尿中メチル馬尿酸定量
  4. トリクロロエチレンー尿中トリクロロ酢酸、尿中総三塩化物定量
  5. テトラクロロエチレンー尿中トリクロロ酢酸、尿中総三塩化物定量
  6. 1,1,1-トリクロロエタンー尿中トリクロロ酢酸、尿中総三塩化物定量
  7. ノルマルヘキサンー尿中2.5-ヘキサンジオン
  8. メタノールー尿中メタノール
  9. 二硫化炭素ー尿中・血中二硫化炭素
  10. スチレンー尿酸マンデル酸

 

太字は国試に既出。

出題例は101F78など。

 

正直これを丸暗記や語呂で覚えるのは苦しいので、高校レベルの化学式だけ書いて覚えようとしてみました。

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構造式の書き方などはちゃんと覚えていないので適当です

 

基本的には有機物はそのままだと尿に溶かせないので、-OHや-COOHをくっつけて溶かします。

1. ベンゼンは-OHをつける。

2,3. トルエンとキシレンはメチル基が一個多いだけなので代謝物もメチル基の有無で区別します。

4-6. クロロとつくものは全て、-COOHをつけるか、塩化物定量

7. ヘキサンとついているのでそのまま

8,9. そのままなので割愛

10. これだけ化学式から覚えるのはきつそうなので、丸暗記。消去法でもとけます

 

前半の構造式を一度書けばスチレン以外理解で導けるので、全て丸暗記するよりだいぶ楽なのではないかと思います。

 

以上です。