『内科救急診療のロジック』が医学生が救急の勉強をするのに最適だったので紹介します!

こんにちは、とうためです!

 

医学生のみなさん、普段どんな参考書で勉強していますか?

医学部の学生が使う参考書の定番と言えば、病気が見えるとイヤーノートですね。

僕も毎日使っています。他にも国試対策本はけっこうたくさんありますよね。最近だと『まとめてみたシリーズ』とか、使ってる人を見かけます。僕も友達に教えてもらって読みました。

例題がほんまかいなってくらい簡単だけど、確かに分かりやすかった(笑) 精神科です。

 

最近の国試は臨床に即した問題が多いとは言われますが、ポリクリを回ってみて、自分はまだまだ実臨床と解離があるように感じました。

特に、症候学。

これは臓器別の国試の問題だけでは全く心もとない。

 

たとえば国試の問題では、

○○歳 男性

【現病歴】

【現症】

【身体所見】

【血液検査】

・・・

とまとめて提示されますが、実際の救急現場でこれらの情報は一度には提示されません。1.救急車からの電話で大まかな容態を把握→2.到着したらABCDをチェックして問題があれば対応→3.血液検査やX線をオーダーしながら→3’. 同時並行で鑑別を考える→4.上級医や他科の医師にコンサル……

 

国試が終わって、いざ研修医として働き始めるのは今からきっかり1年後です。最初の当直の日、たとえば原因不明のショックの方が運ばれてきたとします。僕は、上述の対応をスムーズにこなせるビジョンが全く見えません。

だから、国試より難しいとか簡単とかではなく、手触りのある危機感として、「臨床に即した症候学」は大事だと思うのです。

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そんなこんなで、興味のある科は研修医向けの参考書を使って勉強することが多いのですが、これも実はピンキリです。「~マニュアル」みたいなやつはマジで「これを見たらこの検査をオーダー!この検査値だったらこの薬!」みたいなマニュアルしか書いてなくて、病態の記述はイヤーノート以下だったりします。ただこれは、「忙しい研修医がその時すべき対応をまとめた本」という目的を考慮すれば当然のことでもあります。あらゆるものごとに絶対的な善悪は存在せず、ただ「その目的に照らし合わせて良いか悪いか」が存在するに過ぎません。我々は自らの目的に適う本を、自分で探さねばならないのです。

 

ここまでの内容をまとめます。僕たち医学生に必要な参考書には条件があります。それは

①「実臨床に沿っており」、かつ、②「知識の少ない状態で読んでも勉強になる」参考書です。

 

医学書の記事は初回なので、前置きが長くなりました。ですのでこのブログでは、この2条件を満たす医学書を、積極的に紹介していきたいなと思っております!

 

 


 

本の紹介

動きながら考える!内科救急診療のロジック

動きながら考える!内科救急診療のロジック

 

 

この本のよいところは、以下の3点です

  1. 救急現場における「実際の動き方」が明記されている

  2. 研修医と指導医、ベテラン医の3人の会話で進むため、「研修医がやりがちな凡ミスがどのように発生するのか」が手に取るようにわかる

  3. 鑑別の挙げ方と絞り込み方を、一貫性をもって学べる

 

順に解説します。

1.救急現場における「実際の動き方」が明記されている

今年2月にあった救急ポリクリで、次のような印象的な出来事がありました。

当時僕はラグビー部出身の、ごつくて歯が真っ白なデキレジ先生について業務を見学していました。その日は救外はけっこうゆったりしていて、なんでこの病院を選んだんですかみたいなお約束の会話をしていたのを覚えています。

そこへ意識障害片麻痺の患者さんが運ばれてきました。同時にご家族も来られており、そのデキレジ先生は僕に「家族に病歴聴取しなきゃいけないから、その間にprimary surveyしてみてごらん」と言ってきました。

やや唐突な提案に混乱しながらも、虚栄心の塊である僕は元気よく「はい!」と答えて患者さんのもとへいきました

 

↓そのときの頭の中の様子です↓

primary survey……?

JCS?GCSの方が救急ではよく使うんやっけ?いや、まずは名前の確認か?ABCD??Airway, Breathing, Circulation...

てかAirwayってどうやって確認するんや???????

まず何をすればいいんや……!

 

……何とか見当識だけ確認したところでタイムアップ。当時国試の救急はサクサク解けていて、安心したるみ切っていた僕は、現実とのギャップに落ち込んだのでした。

 

そうです。

 

臨床現場では「頭の中で鑑別を挙げること」も大事ですが、

それよりも何よりも、「とにかく体を動かして情報を入手する」ことの方が最初は大切なのでした。

 

この本にはその「動き方」が明記されているのが素晴らしいです

例えばPrimaryのAなら、

視診でシーソー呼吸と陥没呼吸の有無を確認し、聴診でstridorが聞こえないかを確認する

Dで確認すべきは、

JCS・GCSによる意識レベル、共同偏視・瞳孔左右差・麻痺の有無である

と明記されています。

 

また、初期の状態把握のための簡単なエコー方法も図示されています。

それらのPrimary Survey の結果を見て、次に出すべきオーダーや血液検査がどう変わるか、エビデンスをもとに示されています

2.研修医と指導医、ベテラン医の3人の会話で進むため、「研修医がやりがちな凡ミスがどのように発生するのか」が手に取るようにわかる

これは類書とも重複する部分です。見落としがちなPitfallを、語呂も交えつつ、会話を読み進めながら学べます。

例えば、「DKAは病態に過ぎないから、治療の前に原因を考えなければならない」などです!

 

3.鑑別の挙げ方と絞り込み方を、一貫性をもって学べる

最初に総論、後半で症例(全部で7つ)という構成です。

初めに学んだ総論を7回繰り返して復習できるので、嫌でも思考の順番が頭に入ります。

そしてこれがすごく気にっていることろなのですが、本書では血液ガスの解釈を重視しています。なぜならば、血ガスは他の血液検査よりも圧倒的に早く(10分以内で)結果が出る検査であり、その解釈から鑑別診断の幅を広げられるから、です。血液ガスの分かりやすい本には他に、

竜馬先生の血液ガス白熱講義150分

竜馬先生の血液ガス白熱講義150分

  • 作者:田中 竜馬
  • 発売日: 2017/02/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 などもありますが、本書のほうが実用的で覚えやすいと感じました。

また、診断に至ることよりも重篤度を把握することが重要であるというERの原則が貫かれており、救急診療での刻一刻と変化する時間の流れを体感できます。

 

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以上です!

 

まとめ

『内科救急診療のロジック』

以下の人はおすすめ!

  • 症候学に興味あり

  • ER・救急診療に興味あり

  • 救急ポリクリの直前

  • 血ガス読めるようになりたい

 

症候学や臨床推論の参考書は他にも10冊以上読んでいるので、適宜また紹介していきますね。

ではまた!