『Lean Better』よりエビデンスに基づく学習法をまとめてみる

こんにちは!とうためです
 
今日は効率の良い学習法についてです。
自分が初めて勉強法に関する本を読んだのは確か小学生の時、父親が買ってきた本だったと思うのですが、そこには
”逆立ちをすると頭に血流がいき回転が速くなるから、逆立ちして本を読め” と書いていました。
これは、嘘だと思います。
逆立ち単体で見れば血行促進して良いとは思うんですけどね。なんでも組み合わせりゃいいってもんじゃないですね。
 
雑談はこれくらいにして、
 
今日扱う本は、こちら。

 

僕がこの本を読んだのは2年ほど前だったと思いますが、未だに、勉強法を扱った本ではぶっちぎりで良い本だと思っています。
その理由は
  1. 学習効率を高めるための方法が、「今からできる」具体的な方法で書かれていること
  2. それらすべてに、エビデンスがあること
です。中高時代も含め、勉強法に関する本はかなりたくさん読んできましたが、ここまで首尾一貫してエビデンスに基づいて書かれているハウツー本は他に知りません。
巻末には20ページ以上におよぶ引用論文のリストがあります。
 
本記事ではその中から特に、自分の勉強にも生かされた方法に絞って、紹介していきます!
それでは、行ってみましょう。
 

はじめに

本書では専門知識やスキルを身に着けるための体系的なアプローチとして、次の6つを挙げています。
1.価値を見出す
2.目標を設定する
3.能力を伸ばす
4.発展させる
5.関係づける
6.再考する
です。順にみていきましょう。
 
 

価値を見出す

心理学者のエレン・ランガーは学習に関して、次のような実験を行いました。
”ランガーは初期に行ったある実験で、学生を二つのグループに分けて教科書の文章を読ませた。片方のグループには文章を「勉強する」よう指示し、もう片方のグループにはその文章を何らかの形で「自分にとって意味を持たせる」よう指示したのだ”
 
結果、「意味を意識する」という指示を与えられたグループの方が、理解度が高く、内容も良く記憶していることが分かりました。また、書いた作文の質も高かったそうです。
 
ここから分かることは、「人は自分にとって価値のあることしかやらない」ということです。
例えば英語がどれだけ大事で勉強しんければと焦っていても、英語に価値を感じなければ英語は話せるようになりません。「母国についての評価の低いバイリンガルほど、すぐに母国語を忘れる」という研究結果もあります。
従って、何かを学び始めるときには、ただ義務感から始めるのではなく、次の質問に答えてから取り組むと捗ります。
この学ぶ対象は私にとってどういう価値があるのか?どうすればもっと自分に関連性をもたせられるか?この知識を自分の生活にどのように応用できるか?
 
例:僕は、英語を学ぶときは、どれだけ難解にな単語であっても、勉強した単語で必ず例文をひとつ作る、ことをしています。こうすることで、単語学習に価値を見出し、記憶への定着が良くなるからです。
医学でいうと、「参考書で表面を読んだだけの知識は覚えていないけれども、自分の発表準備のためにまとめた知識は結構覚えている」と感じたことのある人もいるのではないでしょうか?理由は簡単、「人に説明する」という目的に対して調べた知識は「価値がある」からなんです。
 
ではこの目的、どのように立てるのが良いのでしょうか?
 
 

目標を設定する

”私たちは知らないことを理解するために最善を尽くしていない。そして知っていることについては過信している。”
 
Twitterチェック、インスタチェック、旅行の計画を考える、これらをしながら勉強していた学生は成績が悪いことが、(当たり前ですが)示されています。そしてここからが面白いのですが、これら気が散ることをしていた学生は、隣に座っている学生の成績も下げている、というデータが出ています。隣の学生は真面目に授業を聴いていたにも関わらず。
集中できない原因は、目標が定まっていないことにあります。
 
目標を設定するために最もよいのは、勉強すべき対象を明確にすることです。
このために本書で提案されている方法が
  1. あるテーマについて新しく学ぶ前に、そのテーマについて知っていることを書き出す
  2. 小テストによる明確化・フィードバック・判定
です。
1の例:今日は「SLEについて勉強するぞ」と思ったら、テキストを開く前に自分が知っているSLEの知識(診断基準、疫学、治療、合併症etc...)を白紙に書き出してみましょう。何が分からないかが明確になります。
これ、正直やり始めるまでは億劫なのですが、いったん始めれば苦痛じゃないし、めちゃくちゃ良いです。時間を決めてやるのがおすすめです!
 
2の例:問題集を解いたり、単語帳で復習して到達度を測ることですね。
 
自分が何を学習しているのかを意識する。
このテーマは「メタ認知」とも関わっています。メタ認知とは、「自分が思考している」という事実そのものを認識していることです。これは禅や仏教思想、インド哲学でも論じられている歴史ある主題でありながら、現代でもその全容がつかめていない、古くて新しいテーマと言えます。メタ認知はとても面白いので、別の記事で改めてご紹介します。
 

能力を伸ばす

grow に対する画像結果
”医療の世界では字の汚さが原因で年間7000人の死者が出ている”
”勝ちたい人間は大勢いる。だが、準備するものはどれだけいるか”
能力は経時的に変化していきます。成長を最大化するために重要なことは、自分のミスを書き出し、モニタリングすることです。
 
例:僕は毎日オンライン英会話をしています。どんなに上手く喋れた日でも、「あそこはこの語彙を使った方がより正確に伝わったな」とか「あのフレーズそんな難しくなかったのに3回も聞き返しちゃったの何でだろう」のような改善の余地を見つけることができます。
こういった振り返りを積み重ねることが、能力アップには不可欠です。
 

発展させる

development に対する画像結果
”実態あるものへの渇望は、私たちのあらゆる思考に影響する。見たり聞いたり考えたりすることほぼすべてを変えてしまう”
 
学んだ知識はそのままではただの知識に過ぎません。
知識を増やすことは目的ではないですよね?それを使って目的を達成するための手段に過ぎない。
従って、得た知識は使えるものにする必要があります。
 
そのために必要なのが、自己説明です。
「今読んだことには何が書いてあった?」「どうつじつまが合うのか?」「以前にも出てきた概念だろうか?」と自問しましょう。
もうひとつ、デザイン思考でも重要な概念ですが、「なぜ」を問うことも重要です。
トヨタ自動車の「なぜなぜ5回」が企業の生産性を向上させているという話はあまりにも有名ですね。5W1Hのうち、"Why"だけは本質を掘り下げる力があります。
なぜ著者はこのように主張しているのか?、なぜ著者の言うことを信じるべきなのか?これが大事なのはなぜか?
このように自問してみてください。
 
これを簡単にする具体的な方法として、「人に教える」がありますね!
例:僕は八方美人な性格が災いして幸いして、6つの勉強会を掛け持ちしています。そこで問題を出し合ったり質問したり発表したりさまざまな方法を試しました。そうして分かった唯一のことは「どんなに分かりやすい説明を聞くよりも、自分が人に説明したことの方が記憶に残っている」ということです。
身に覚えのある方もいるんじゃないでしょうか?居酒屋で酔っぱらって話し込んで家に帰ってきたら、不思議なことに自分の発言ばっかり鮮明で、相手の言った内容をほとんど思い出せない。ということがままあります。
それと同じです。
 

関係づける

analogy に対する画像結果
”同じ練習を連続して繰り返さない。長時間しても良いが、様々な練習を組み合わせなければならない”
 
学んだことは、他の知識と関連付けることで定着します。
そのために「アナロジー」を用いましょう
アナロジーとは日本語で類推などと訳される言葉です。簡単に言うと、「似た特徴をもつものや、同じ構造をもつものを探す」ということですね。
活版印刷で有名なグーテンベルクは、ワイン作り用のブドウ圧縮機を見て印刷機を発明した、と言われています。
 
例:産婦人科を学習しているときに、「クロミフェン療法は視床下部にフィードバックをかけて、GnRH分泌亢進する」という知識を得たら、それだけ覚えて終わりにせず、「今まで勉強した病気の中で同様にフィードバックが機序になった病態は他にもあったかな→甲状腺機能低下症からの高PRL血症もそうか」とつなげていくことを指します。
 
アナロジーのトレーニングやその有用性については、

アナロジー思考知的戦闘力を高める 独学の技法

 

などに詳しいです。興味がある方はぜひ!
 

再考する

”私が魔法の杖を持っていたら何を消すかな?それは、過信だよ”
これはノーベル経済学賞を受賞したことで有名なダニエルカーネマンの言葉です。彼のプロスペクト理論は人間の不合理な損失回避傾向を示した興味深い理論ですが、彼の著作を読まずとも、人間というのは様々なバイアスや思い込みを持つ生き物であるということは納得していただけるはずです。
人が「実際よりも自分は良く知っていると思い込みやすい」ということは心理学の実験で確かめられています。
アメリカの医学生を対象にした実験では、「学んだことの50%を数か月で忘れてしまう」ことが分かっています。これは、ある学生が解剖学をトップの成績で受かったとしても、半年後に同じテストを受ければ落第する、ということを意味します。
また、同じことを学習する場合、1時間に詰め込むよりも、10分ずつ6回に分けたほうが定着が良くなる、とも言われています。
ここから導き出されるのは、分散学習がいかに大事か、ということ。
分散学習は英語で"spaced repetition"といい、心理学分野で圧倒的なエビデンスを誇る学習方法です。
簡単に言えば、「どんなにちゃんと勉強したことでも、復習せんかったら忘れるよ!君は君が思っているほど記憶力が良くないんだぜ、お願いだから目を覚ましておくれ」
ということです。
 
最初は翌日、次は1週間後…というようにだんだん間隔を伸ばしていくのが理想と言われますが、その根拠になったエビングハウス忘却曲線はしばしば誤解されていると言われる上、そもそも1世紀以上前の化石のような論文なので、あまりあてにしなくてもいいと思っています。個人的には毎日復習することを推奨しています。そんな時間かからんし。
 
復習の重要性と具体的な方法はこの記事でも紹介しています。

toutamed.hatenablog.com

 

 
僕自身は語学の学習にAnkiというサービスを使っています。

このように、この1か月間で自分が何枚のカードを学習して、どのくらいのカードはうろ覚えであるか、というのを計算してくれる優れものです。
覚えているでしょうか?自分の学習状況を知ることが大事なんでしたね!(3.能力を伸ばす)
Ankiはwebで無料で使えますし、使い方もめっちゃ簡単なので、暗記事項の多い試験が控えている人はぜひ活用してみてください!
 
以上です!
 

まとめ

さっそく復習しましょう!
  1. なぜそれを学ぶのかを問う!
  2. 勉強する前に知っていることを書き出す。勉強したら小テストで確認する!
  3. 自分のミスを振り返る!
  4. なぜ?を問う!人に教える!
  5. アナロジーで関連付ける!
  6. 分散学習する!
でしたね!
 
 
最後に一つ研究結果をご紹介します。
テーブルに置いたiPhoneが視界に入っているだけで、それを全く触っていなくても、作業効率が落ちる。

 身に覚えのある人は多いですね?僕もです!スマホはカバンにしまっておくか別の部屋に置いておくのが良いですね!

僕は毎日9時~17時までは見ないと決めて、本棚につっこんでます。
人間の意志は悲しいほどに薄弱です。うまく集中できる仕組みを作るのがよいですね!
 

おまけ

勉強法に関しては下記の書籍も大変お勧めです!
思考の整理学 (ちくま文庫)

思考の整理学 (ちくま文庫)

 

 言わずと知れた名著ですね。中学生の時に先生に配られたまま本棚の肥やしになっていた本ですが、大学に入ってから読むと驚くほど良いことが書いてあります。

 

本の読み方などプラクティカルなところが多いです。文字が大きく読みやすい。超おススメです。

 

 

以上です!ではまた