文明が進むと脳出血が減り、脳梗塞が増える理由

■脳血管疾患による死亡率の推移
以下のようなグラフがあります。

厚生労働省 人口動態統計より
 
 
このグラフのポイントの一つに「かつて死亡率第一位だった脳血管疾患が、現在は減少している」という点があります。

 

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国立循環器病研究センター
 
 
これがその内訳です。
①脳内出血が激減しているのが脳血管疾患減少の主な要因であるようです。
一方で脳梗塞は横ばい~増加しています。
 
①脳内出血の減少
1960年代に大規模な疫学調査が行われ、高血圧が脳出血の最大のリスクであることが認知されたことによります。塩分の摂りすぎによる高血圧とタンパク質不足による血管壁の脆弱性が改善された結果、減少したそうです。
脳梗塞の増加
しかしその後、経済成長に伴って食生活が豊かになり、糖尿病や高脂血症という危険因子が増加しました。これによりいわゆるアテローム血栓脳梗塞が増加した、という背景があるようです。
 
また現在、脳卒中は米国の死因の第3位であり、そのうち87%が虚血性、13%が出血性だそうです1。一方で、一部の発展途上国では脳卒中の50%以上が出血性です2。欧米食、だけではないでしょうが、その影響の大きさが分かります。
 
②はすぐ分かるのですが、①脳出血減少の方が最初ピンとこなかったので、まとめてみました。
 
■おまけ
113F1に、この知識を使った問題があります。
公衆衛生は暗記が多いので、今回のように理解で分かる選択肢を増やしていきたいですね。
 
 
1 D. Lloyd-Jones, R.J. Adams, T.M. Brown, et al.: Heart disease and stroke statistics 2010 update: a report from the American Heart Association. Circulation. 121:e46-e215 2010 PMID: 20019324
2 G. Zenebe, J. Asmera, M. Alemayehu: How accurate is Siriraj stroke score among Ethiopians? A brief communication. Ethiop Med J. 43:35-38 2005 PMID: 16370529